- 岩手県北上市和賀町煤孫を拠点としている和賀大乗神楽保存会です。
口伝では、1315年(正和4年)に慈覚大師の弟子である玉木明介が京都東山の聖護院の門跡として修験を修行し、煤孫に帰郷後、貴徳院を開基し、権大僧都満開山円光法師によって創始した神楽とされ、"貴徳院法院神楽"とも呼ばれていました。
【演目の紹介】
龍殿(りゅうでん)
一般的には阿吽二面の荒舞です。龍については水神とも海神とも天界神ともいわれますが、それぞれの場によって変わっていてどのような性格の龍であるか明らかではありません。大乗神楽での“龍殿”は貴船大明神と加茂大明神で、本地は知勝仏であるとされ、この二人の舞とされています。扮装は、仁王の仮面をかぶり頭部にザイを付け、タッツケ袴に襷がけで帯刀をした姿で登場します。激しい太刀舞いによって魔を鎮め、退散させる舞であると見られています。
鐘巻(かねまき)
鐘巻は、長者の一人娘が女人禁制のお寺に参拝に行き、禁制を犯したために邪身と化し、それを一人の僧侶の念ずる御力によって成仏させたという内容を舞で表現したものです。
榊舞(さかきまい)
榊舞は、五大明王のうち西方を守護する軍茶利夜叉明王の舞とされ、本地は宝生如来とされます。また、大乗神楽の上位にして衆生共々に悟りの境地に入ろうとする菩薩乗であることから、涅槃常楽の彼岸に到達し十戒を保つ人々を救う加持祈祷の神楽舞とされます。手次や踏み足の所作、九字(手印)などの修験の呪法が色濃く残る最高の祈祷舞です。扮装は、髭のある吽の白仮面をかぶり、頭部にはザイを付け、常衣に玉袈裟と袴を着けて白足袋を履き、背には二本の幣帛をさし、帯刀した姿で登場します。一人舞ですが、激しく舞われ特徴のある九字の印結びが見られるなど、祈祷色が強く格調高い祈祷舞です。
魔王(まおう)
魔王の舞は、“山の神舞”ともいわれ、本地仏を天鼓雷音とする降伏金剛夜叉明王の舞とされてます。この明王は、イザナギ・イザナミの二神の御子とされ、海神や水神・風神・火神と共に兄弟神とされます。悪魔を降伏させて衆生を繁栄に導く神とされることから、この舞は悪魔を祓い人々に繁栄をもたらす祈祷舞とされています。眼を怒らし歯をむき出した仮面をつけ、ザイを被り常衣に袴姿で帯刀しての一人舞です。
天の岩戸(あまのいわと)
岩屋に隠れた天照皇太神を導き出すために、八百万の神々が岩戸の前で繰り広げる神事を表現したもので、大乗神楽では、一般の平神楽とは異なり、特に依頼されなければ踊らない演目です。岩戸にめぐらしたしめ縄は、藁縄ではなく紙で切ったキリコと呼ぶものを使用します。これは、安産のお守りになるといわれています。4人舞です。